krtek@Japan

土曜日, 2月 24, 2007

生産性のおはなし

今、日本と北欧についてデータを使いながら、いろいろ比較してみようとしている。その作業の中で、各国の産業セクタごとのGDPを示した統計データを見つけた。

ただ、そのデータを使って何をするか、どう解釈するかがむずかしい。たとえば、各産業ごとに一人あたりのGDPを計算して、「日本の建設業は、フィンランドの建設業より生産性が高い!」とか言えないかなぁ、とか考えた。

北欧の職場では、残業がなく5時とか4時に帰宅し、夏休みも2週間3週間とれるのがふつうなのだそうだが、国民一人あたりのGDPが日本と変わらないかそれ以上である。どうしてそういうことが可能なのかすごく不思議で、これはきっと日本と北欧で「生産性」に違いがあるからだろうと思って、生産性というものに前々から関心を持っていた。

そんなことを考えた折、タイムリーなことにweb上で生産性に関する論争が盛り上がっているみたいだ。

これを読むと「(労働)生産性」っていうのがなんなのかよくわからなくなってくる。サービス業なんかは日本だろうがインドだろうがやってることはさほど変わらないのだが、どれだけ生産したかっていうのは結局、どれだけ賃金をもらっているかで測られるので、日本の方が生産性が高い、ということになってしまうという妙なことが起きる。

こんなことが起きるのは、工業のような労働生産性が高い産業が発展している国としていない国がある一方で、サービス産業の国際的な労働力の移動が乏しいために、工業の発展した国のサービス業の賃金が上がってしまうことが原因だ。

つまり、あるの国の産業Aの生産性は、他の産業Bの生産性によって影響を受けるのだ。

そうすると、はじめに目論んでいたように産業セクターごとに日本と北欧の生産性を比較し、ある産業だけ取り出して、たとえば「日本の金融業は優秀!」などという評価は単純にはできないということだ。ううむ。

さて、生産性ってなんなんだろうか。日本の建設業は生産性が低い、なんてことを言われたりするけど、どうやって比較すればいいんだろう。さっきの話のように一人あたりGDPでの国際比較では何を比べているのかよくわからない。それに、そもそも公共事業だったら、役所が予算付ければそれがそのまま建設業の生産額になってしまうのだから、生産額では本当の「生産性」はよくわからんよな。はてさて、もう少し勉強が必要だ。

ところで、先の生産性を巡るweb上での論争、とくに山形さんと池田さんの論理と情念の混ざった論争(というか罵り合いというか)はタメになったなあ。ふたりは結局同じことを別な切り口で語っているように感じた。

「ある産業の生産性は、他の産業の生産性によって影響を受ける」という現象の解釈について、池田さんは、サービス業に国際的な競争が乏しいから日本のサービス業以外の産業の労働者は高い金を出してしぶしぶそのサービスを買っているのだ、という見方をしている。端的には、「ウェイトレスの時給は、ハイテク産業から「補填」されてるんだ」という言い方をしている。

一方、山形さんは、「生産性が低い産業もあるけれど、生産性の高い産業で働く人は、生産性の低い仕事をせずに済んでいるのだから、お互いにもちつもたれつである」というような見方をしている。

個人的には山形さんの見方の方が好きだ。こういう考え方を聞いて、社会観が根本から変わる人もひょっとするといるかもしれない。そうか、こういう具合にみんなで働いてみんなでひとつの国を運営していっているのだ、と。

池田さんの見方は、「生産性が高い産業が低い産業に「補填」しているのだ」という言い方にも現れているように、サービス業についても国際的な完全競争が実現している状態が「最良」の状態であるということがあらかじめ前提になっている感じがする。私の考えでは、先に完全競争状態ありきではなくて、まず日本という国があり、この国の法律とやり方で現にやっているのだから、まずそちらが前提条件になるべきなんじゃないかと思う。その点でも山形さんの言い方の方が好きである。

ただし、池田さんが考えているのは、今後経済のグローバライゼーションがさらに進んだ状態、つまりサービス業においても国際的な労働力の流動化が起きた状態のことなのだろう。そのときにこの国の経済になにが起きるのかをシミュレーションするためには、池田さんのような見方もやはり不可欠だ。

結局、どちらのお方も示唆に富んだいいこと言ってるなぁ、というのが私の感想でした。

金曜日, 2月 16, 2007

スターン・レビュー「気候変動の経済学」

スターン・レビューと似たような研究はこれまでもずっと行われてきたのに、まるでこの種の研究がはじめて行われたかのように今世間的に妙に注目されているのは他の研究者の方々もさぞくちおしいことでせう。

イギリスが気候変動の分野で主導権をとるぞ、という戦略がひとつ成功したんだろうな。